母親


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My mother hadn’t the least idea what it meant to be kissing rich people’s backsides. ALL she knew how to do was to groan and lament all day, and with her groaning and lamenting she brought on the boozy breath and the potato dumplings grown cold. She got us so damned jumpy with her anxiety that we would choke on our own spittle, my brother and I.

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groan 唸る、うめく、唸り声のような声を出す
lament (声をあげて)悲しむ、嘆く、無く
potato dumplings ジャガイモ料理の一種。蒸したジャガイモの団子
damn 強く非難する、責める、とがめる<口>呪う
jumpy よく跳ねる、(話など)神経質な、びくびくして
anxiety 心配、不安、懸念
choke〜 〜をチョークする、〜を窒息させる、息が詰まる、窒息する
spittle ツバ、泡


さて、間があきましたが、父に続いて母が登場します。
飲んだくれの父の母とはどういう人物かというと、ミラーは常にかなり仮借のない批判を加えています。厳しい批判は終生続き、最晩年の「母」でようやく和解を得ていますが、この時点でも相当容赦ないw しかし、この容赦のなさを楽しめなければこの作家に接近できないでしょう。

最初のhadは動詞です。assじゃなくbacksidesになっているのは同じ言葉の繰り返しを避けるためと、若干柔らかい表現のためでしょう。groanとlamentに共通するのは、ふたつとも声をあげるというニュアンスです。なので「ウーウーうなりながら嘆く」とやっておきます。potato dumplingsはgoogle先生の本領発揮です。レシピを見ると茹でたジャガイモにタマネギや塩、コショウ、卵、バターを混ぜ、小麦粉をまぶし、沸騰した塩水で茹で上げるという料理でした。イメージとしてはマッシュポテトの一種ですね。肉入れて揚げればコロッケになりそうです。ここは分りやすさを優先し「茹でたジャガイモの団子」にします。

choke on our own spittleはgoogle先生に聞いたところ、あんまりない表現のようです。ourをher、his、myなどに変えて検索したところ、それぞれ数十件だけありました。つまりこれは古い時代の言い回しなんでしょう。だから、軽く流しておきます。anxietyは心配や不安という意味ですが、悪循環に陥っている母の心配ということで、「悩み」としておきます。brotherなんですが、これにはちょっとした小話もあるんですが、別の機会に。とりあえず弟としておきます。She got us so damned jumpyのところは、正直あんまりよくわからない。困ったときのgoogle先生で” damned jumpy”と調べてみると131件見つかり「とってもひどい」という意味のようです。damnedはムズいなあ。比喩をつかって、「豚みたいにイライラさせた」とやっておきましょうか。


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母は金持ちのケツの方にキスするという最悪のアイデアさえもっていなかった。彼女の知っていることといえば、一日中ウーウーうなりながら嘆くことだけだった。母が一日中そうやっていた結果は、泥酔した酒臭い息の男を家に運んでくるだけで、放っておかれた茹でたジャガイモの団子は冷めていった。母は悩みのあまり僕と弟を豚みたいにイライラさせたから、僕らは完全に息が詰まってしまった。

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